202610.28
人材ビジネスの知識

民法 同時履行の抗弁権(第533条)

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りではない。

 

1 用語の確認

双務契約…契約当事者の双方が義務を負う契約のこと(例:売買)

↔片務契約…契約当事者の片方が義務を負う契約のこと(例:贈与)

引換給付判決…給付の訴えに対して、原告の請求を認めるものの、被告に対する債務の履行を命じる判決のこと

 

2 同時履行の抗弁権とは

同時履行の抗弁権とは、双務契約において、一方が債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる権利である。例えば、A(売主)とB(買主)との間で、100万円の自動車を売買する契約を締結した場合、Aの自動車の引き渡しと、Bの代金100万円の支払いは、同時に行わなければならない、仮にAが、Bに対して「先に金銭をよこせ」と請求しても、Bは、Aが自動車の引き渡しの準備が完了するまで(履行の提供をするまで)は、同時履行の抗弁を主張して、代金100万円の履行を拒むことができる。

同時履行の抗弁権の趣旨は、当事者間の公平にある。もし、Aに代金の先払いを強いられたBが、代金を支払った後に、Aが自動車を引き渡さない状況が続いた場合、Bのみが義務を果たした状態となり、不公平だと感じるだろう。

 

3 要件

(積極的要件)

①同一の双務契約から生じた双方の債務が存在すること

②相手方の債務が弁済期にあること

 

(消極的要件‐同時履行の抗弁が否定される場合)

①相手方が債務を履行したこと

②相手方が履行の提供をしたこと

→ただし、相手方が一旦履行の提供をしたとしても、継続して履行の提供をしない限り、本人は、同時履行の抗弁を主張することができる

 

4 効果

①契約の相手方から、債務の履行を請求されても、相手の債務の履行と同時でない限り、自己の債務の履行を拒むことができる

→仮に、相手方(原告)が訴えを起こしたとしても、本人(被告)は、同時履行の抗弁を主張することで、裁判所は、引換給付判決を下すこととなる(請求棄却判決や、請求認容判決とはならない)

 

②履行遅滞の責任を負わない(相手方は、債務不履行を理由とする損害賠償請求や契約の解除を主張することができない)

 

5 同時履行の抗弁権が認められるもの/認められないもの

認められるもの 認められないもの
請負人の目的物引渡義務と注文者の報酬支払義務

弁済と受取証書の交付義務(例:領収書)

取消しに伴う売主・買主の原状回復義務

不動産売買による登記協力義務と代金支払義務

賃貸借契約における修繕義務と賃料支払義務

賃貸借契約終了による敷金返還債務と建物明渡債務

債務の弁済と抵当権登記の抹消

弁済と債権証書の返還(例:借用書)

6 確認問題(解答は、次回にて)

(1)〔     〕とは、双務契約において、一方が債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる権利である。

 

(2)双務契約において、相手方の債務が〔     〕にないときは、同時履行の抗弁権を行使することができない(533条ただし書)。

 

(3)訴訟において、同時履行の抗弁が認められた場合、裁判所は、〔     〕判決を下すこととなる。

 

(4)民法533条では、相手方が提供すべき債務の履行には、債務の履行に代わる〔       〕の債務の履行も含まれる。

 

(5)弁済と〔ア    〕証書の交付は、同時履行の関係にたつが、弁済と〔イ    〕証書の返還は、同時履行の関係にたたない。

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