202504.30
人材ビジネスの知識
出来高払制の保障給(第27条)
出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定の賃金の保障をしなければならない。 |
本条は労働者の責にもとづかない事由によって、実収賃金が低下することを防ぐ主旨であるから、労働者に対し、常に通常の実収賃金をあまりへだたらない程度の収入が保障されるように保障給の額を定めなければなりません(昭和63.3.14基発1号)。
ただし、労働者が労働しない場合には本条の保障給を支払う必要はありません。
請負制とは、一定の労働給付の結果又は一定の出来高に対して賃率が決められるものです。本条においては、出来高払制は請負制の一種であると解しています。
- 労働者が休業した場合、その責任が労働者側にあれば、使用者に賃金を支払う義務はなく、本条の保障給も支払う必要はない。ただし、その休業が使用者の責めに帰すべき休業の場合には本条の保障給を支払う必要がある。
- 保障給の額について本条は何ら規定していないが、本条の趣旨は、労働者の最低生活を保障することにあるから、「常に通常の実収賃金と余りへだたらない程度の収入が保障されるように保障給の額を定める」べきである(昭和3.14基発1号)。大体の目安としては、休業の場合についても労働基準法第26条(休業手当)が平均賃金の100分の60以上の手当の支払を要求していることからすれば、労働者が現実に就業している本条の場合については、少なくとも平均賃金の100分の60程度を保障することが妥当と思われる(コンメンタール27)。
《参考》
- 賃金構造からみて固定給の部分が賃金総額の大半(概ね6割程度以上)を占めている場合には、本条のいわゆる「請負制で使用する」場合に該当しないと解される。
- 保障給を持たない、いわゆる「完全歩合制」は、本条違反となる。
- 「保障をする」とは、現実に保障給を支払うという意味だけでなく、保障給を定めるという意味をも含むものと解されるから、保障給を定めないというだけでも本条違反が成立すると考えられる。ただし、本条はその定めの形式を問わないから、労働契約その他によって定められていればよく、就業規則に定めのないことが直ちに本条違反となるものではない(コンメンタール27)。
- 本条の保障給は、労働時間に応じた一定額のものでなければならない。したがって、1時間につき、いくらと定める時間給であることを原則とし、労働者の実労働時間の長短と関係なく、単に1カ月について一定額を保障するもののごときは、本条の保障給ではない。ただし、月、週その他一定期間について保障給を定める場合であっても、当該保障給につき基準となる労働時間数(通常は当該一定期間における所定労働時間数と一致)が設定され、労働者の実労働時間数がこれを上回ったときはその上回った時間数に応じ増額されるようなものは、本条の保障給とみるべきであろう。なお、労働者の実労働時間数が保障給の基準となる労働時間数を下回ったときに、その下回った時間数に応じ減額されないものは、厳密な意味では、労働時間に応じているとはいえないが、減額されないから保障給でないとするのは妥当でなく、前述の増額措置がとられている限り、本条の保障給とみて差し支えないものと考えられる(コンメンタール27)。
最低賃金(第28条)
賃金の最低基準に関しては、最低賃金法の定めるところによる。 |
最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効となります。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなされます。