退職時の証明等(第22条)
① 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
② 労働者が、第20条第1項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。 ③ 前2項(上記①②)の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。 ④ 使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第1項及び第2項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。 |
≪参考≫
イ)懲戒解雇の場合であっても、労働者側から請求された場合には、証明書を交付しなければならない。
ロ)退職時の証明を求める時期や回数に特に制限はないので、当該証明書の請求権が2年の時効により消滅しない限り、使用者は、同一の事項について何度でも労働者の請求に応じる必要がある(平成3.31基発169号)。
ハ)退職時の証明書の法定記載事項は、①使用期間、②業務の種類、③その事業における地位、④賃金又は⑤退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む)とされているが、たとえこれらの事項であっても労働者の請求しない事項について記入してはならない。例えば、解雇された労働者が解雇の事実のみについて使用者に証明書を請求した場合、使用者は、解雇の理由を証明書に記載してはならず、解雇の事実のみを証明書に記載する義務がある(平成1.29基発45号)。
二)労働者と使用者との間で退職の事由について見解の相違がある場合、使用者が自らの見解を証明書に記載し、労働者の請求に対し遅滞なくこれを交付すれば、基本的には法第22条第1項違反とはならないものであるが、それが虚偽であった場合には、法第22条第1項の義務を果たしたことにはならないものと解される(平成3.31基発169号)。
ホ)解雇の理由は、具体的に示す必要があり、就業規則の一定の条項に該当することを理由として解雇した場合には、就業規則の当該条項の内容及び当該条項に該当するに至った事実関係を証明書に記入しなければならない(平成1.29基発45号)。
ヘ)雇用保険の離職票は、失業者が公共職業安定所に提出する書類であるため、雇用保険の離職票の交付をもって、退職時の証明書に代えることはできない (平成3.31基発169号)。
ト)本条第4項は、あらかじめ計画的に就業を妨げることを禁止しているのであって、照会を受けた場合に回答することまで禁止しているのではない(平成12.26基発1226002号)。