賠償額予定等の禁止(法16条)
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。 |
本条は、労働者の労働契約の不履行について、違約金を定め、又は損害賠償の金額を予定することを禁止した規定であるが、現実に生じた損害について賠償を請求することまで禁止するものではありません。(昭和22.9.13 発基17号)。
≪参考≫
「損害賠償額の予定」とは、労働者の労働契約の不履行があった場合に実際の損害額にかかわらず、あらかじめ一定の金額を損害賠償額として定めておくことをいいます。
前借金相殺の禁止 (法17条)
使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。 |
本条で禁止しているのは、労働することを条件とする債権と賃金の相殺であり、労働者が使用者から人的信用に基づいて受ける金融・生活資金など明らかに身分的拘束を受けないものは、本条における債権には該当しません。(※労使の協定書作成が必要)(昭和33.2.13基発90号)。
≪参考≫
①「前借金」とは、労働することを条件として、労働者に前渡ししておく金銭のことであり、就業後に労働者の賃金から差し引かれるものをいいます。
②使用者が労働組合との労働協約の締結あるいは労働者からの申出に基づき、生活必需品の購入等のための生活資金を貸し付け、その後この貸付金を賃金から分割控除する場合においても、その貸付の原因、期間、金額、金利の有無等を総合的に判断して労働することが条件となっていないことが極めて明白な場合には、本条の規定は適用されません。(昭和63.3.14基発 150号)。
③業主が、育児休業期間中に社会保険料の被保険者負担分を立替え、復職後に賃金から控除する制度については、著しい高金利が付される等により当該貸付が労働することを条件としていると認められる場合を除いて、一般的には本条に抵触しないと考えられるが、労使協定が必要である。また、一定年限労働すれば、当該債務を免除する旨の取扱いも労働基準関係法上の問題を生じさせないこと。(平成3.12.20基発712号)。