労働者と使用者の定義(第9条、第10条)
労働者の定義(第9条)
労働基準法で 「労働者」 とは、 職業の種類を問わず、 事業又は事務所 (以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。 |
「労働者」とは、使用者に使用されて(指揮命令を受け)労働し、賃金を支払われる者をいう。
労働者とみなされる者と労働者とみなされない者は以下のとおりである。
労働者とみなされる者 | 労働者とはみなされない者 |
① 法人の重役で業務執行権又は代表権を持たず、工場長、部長の職にあって賃金を受ける者
② 雇用契約により事業主と使用従属関係にある大工 ③ 労働組合の専従職員 ④ 共同経営事業の出資者であって、使用従属関係にあり、賃金を受けている者 ⑤ 配達部数に応じて報酬を受けている場合の新聞配達人 |
① 個人事業主
② 法人、団体乂は組合等の代表者又は執行機関たる者(使用従属関係にない者) ③ 下請負人(事業主である) ④ 同居の親族(原則) ⑤ 都道府県労働委員会の委員 ⑥ 労働委員会の委員 ⑦ 非常勤の消防団員であって火災、堤防の決壊等限られた場合のみ出勤するもの ⑧ 競輪選手 ⑨ 受刑者 ⑩ 建設業の下請負人 ⑪ インターンシップの学生(原則)* |
* 一般にインターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労働基準法第9条に規定される労働者に該当しないものであるが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かっ、事業場と学生との間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと考えられ、また、この判断は、個々の実態に即して行う必要がある(平成9.9.18基発636号)。
【参考通達】
同居の親族であっても、以下のすべての要件を満たす場合には、労働者とみなされる
(昭和54.4.2基発153号)。
(ア)常時同居の親族以外の労働者を使用する事業(労働基準法の適用事業) において、一般事務乂は現場作業等に従事していること。
(イ)業務を行うにつき、事業主の指揮命令に従っていることが明確であること。
(ウ)就労の実態が当該事業場における他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われていること。
労働者性の判断基準
労働基準法上の「労働者」に該当するかどうかの基準
① 「使用される者」であるかどうか(使用者の指揮命令にあるかどうか) ② 「賃金が支払われる者」であるかどうか(報酬の労務対償性があるかどうか) |
使用者の定義(第10条)
労働基準法で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。 |
【参考通達】
①使用者とみなされるかどうかは、部長、課長等の形式にとらわれることなく、各事業において、本法各条の義務について実質的に一定の権限を与えられているか否かによる。単に上司の命令の伝達者にすぎぬ場合は使用者とはみなされない(昭和9.13発基17 号)。
②在籍型出向の出向労働者については、出向元及び出向先の双方とそれぞれ労働契約関係があるので、出向元及び出向先に対して、それぞれ労働契約関係が存在する限度で労働基準法等の適用がある。すなわち、出向元、出向先及び出向労働者三者間の取決めによって定められるが、それによって定められた権限と責任に応じて出向元の使用者又は出向先の使用者が出向労働者について労働基準法等における使用者としての責任を負うものである(昭和6.6基発333号)。
③移籍型出向は、出向先との間にのみ労働契約関係がある形態であり、出向元と出向労働者との労働契約関係は終了している。移籍型出向の出向労働者については、出向先とのみ労働契約関係があるので、出向先についてのみ労働基準法等の適用がある(同上)。