公民権行使の保障(第7条)
使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。 |
まず、 「公民としての権利に該当するもの」 と 「公民としての権利に該当しないもの」を整理すると、次のとおりである(昭和63.3.14基発150号)
公民としての権利に該当するもの | 公民としての権利に該当しないもの |
・ 選挙権及び被選挙権
・ 最高裁判所裁判官の国民審査 ・ 特別法の住民投票 ・ 憲法改正の国民投票 ・ 地方自治法による住民の直接請求 ・ 選挙人名簿の登録の申出 ・ 行政事件訴訟法に規定する民衆訴訟 ・ 公職選挙法に規定する選挙人名簿に関する訴訟 ・ 公職選挙法に規定する選挙乂は当選に関する訴訟 |
・ 応援のための選挙活動
・ 一般の訴権の行使 |
次に、「公の職務に該当するもの」と「公の職務に該当しないもの」を整理すると、次のとおりである(平成17.9.30基発0930006号)。
公の職務に該当するもの | 公の職務に該当しないもの |
・ 衆議院議員等の議員の職務・労働委員会の委員、陪審員、検察審査員、労働審判員、裁判員の職務
・ 法令に基づいて設置される審議会の委員等の職務 ・ 民事訴訟法の規定による証人の職務 ・ 労働委員会の証人等の職務 ・ 公職選挙法の規定による投票立会人等の職務 |
・ 単に労務の提供を主たる目的として職務(予備自衛官の 防衛招集・訓練招集、非常勤の消防団員の職務など) |
Q 公民権の行使により就業しなかった時間分の賃金については、有給にする必要がありますか?
A 公民権の行使に当たっては、有給たると無給たるとは当事者の自由にゆだねられています。(無給でもよい)
≪参考通達≫
就業規則等に公民権の行使を労働時間外に実施すべき旨を定めておいて、それを根拠に労働者が就業時間中に選挙権の行使を請求することを拒否することは本条違反である(昭和23.10.30基発1575号)。
《参考条文》
労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したことその他裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員若しくは裁判員候補者であること又はこれらの者であったことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律100条)。
≪判例≫
公職の就任を使用者の承認にかからしめ、その承認を得ずして公職に就任した者を懲戒解雇に附する旨の就業規則条項は、本条の趣旨に反し無効である(十和田観光電鉄事件・最小昭38.6.21)。