労働基準法 第1条〜第3条 労働条件の原則、労働条件の決定、均等待遇
労働条件の原則(第1条)
① 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
② この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。 |
【通達】
イ)労働基準法は、労働者がその家族を含めて人格として価値ある生活を営むために必要な最低の基準を定めたものである(昭和9.13発基17号)。
ロ)本条は労働者に人格として価値ある生活を営む必要を充すべき労働条件を保障することを宣明したものであつて本法各条の解釈にあたり基本観念として常に考慮されなければならない。
※本条は、基本理念を宣言した規定であり、この規定に違反したとしても罰せられるわけではない。
ハ)労働基準法の規定があることを主たる理由として、労働条件を低下させることは本条に違反するが、社会経済情勢の変動等他に決定的な理由がある場合には本条に抵触するものではない(昭和3.14基発150号)。
Q いかなる理由があっても労働基準法に規定があることを理由に労働条件を低下させてはならないのでしょうか?
A 労働基準法の規定があることを主たる理由として、労働条件を低下させることは本条に違反しますが、社会経済情勢の変動等、他に決定的な理由がある場合には本条には抵触しません。 |
労働条件の決定(第2条)
① 労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。
② 労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。 |
【用語の説明】
「労働協約」… 労働組合と使用者又はその団体との間に結ばれる労働条件その他に関する協定をいい、その効力は書面に作成し、 両当事者が署名又は記名押印することで発生する。
「就業規則」… 労働者が就業上守るべき規律及び労働条件について、使用者が細かく定めた規則のことをいう。
「労働契約」… 個々の労働者が使用者と一定の労働条件の下で労働力を提供することを約する契約のことをいう。
均等待遇(第3条)
使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。 |
【通達】
「信条」とは、特定の宗教的又は政治的信念をいい、「社会的身分」とは、生来の身分をいう。したがって、職制上の地位、たとえば、職員と工員、常用工と臨時工の区分は、「社会的身分」には該当しないため、「職員は10時始業、工員は9時始業」とするように職制上の地位をもって差別的待遇をすることは、本条違反ではない(昭和 22.9.13 発基 17 号)。
Q 本条の労働条件には、「賃金、労働時間」以外にどのようなものがふくまれますか?
A 賃金、労働時間のほか、解雇、災害補償、安全衛生、寄宿舎等に関する条件も含まれます。 ※採用は含まれていません。(思想信条を理由とする採用拒否は、民法上も、直ちに不法行為や公序良俗違反に該当するとはいえません。) |