202309.26
人材ビジネスの知識派遣法

派遣先による均衡待遇の確保

 

(1)概要

派遣労働者と派遣先の労働者との均衡待遇を推進し、派遣労働者の処遇改善を図るのは派遣元事業主であるが、実際は派遣先による対応がないと処遇の改善が進みません。

そのため、派遣先においても、教育訓練、福利厚生等に関し、必要な措置を講じる必要があります。

(2)教育訓練・能力開発

派遣先は、派遣先の労働者に対して業務の遂行に必要な能力を付すための教育訓練を行っている場合は、これらの者と同種の業務に従事する派遣労働者に対しても、派遣元事業主からの求めに応じ、当該訓練を実施する等、必要な措置を講じなければなりません。ただし、当該派遣労働者が既に当該業務に必要な能力を有している場合や派遣元事業主で同様の訓練を実施することが可能である場合を除きます。

本来、派遣元事業主が必要な教育訓練を行うべきであるが、派遣先の業務に密接に関連した教育訓練については、実際の就業場所である派遣先が実施することが適当です。

実際、派遣労働者に対する教育訓練が少なくなりがちという実情にもかんがみ、派遣先には、派遣元事業主からの求めに応じて、派遣先の労働者と同様の訓練を実施する等、必要な措置を講ずる義務が課せられています。

なお、派遣先は、派遣元事業主が派遣労働者に対し段階的かつ体系的な教育訓練を実施するに当たって、求めがあったときは、派遣元事業主と協議等を行い、当該派遣労働者が当該教育訓練を受けられるよう可能な限り協力するほか、必要に応じた教育訓練に係る便宜を図るよう努めなければなりません。派遣元事業主が行うその他の教育訓練や派遣労働者の自主的な能力開発等についても同様です。

(3)福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)

派遣先は、当該派遣先に雇用される労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設のうち、給食施設、休憩室、更衣室については、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者に対しても、利用の機会を与えなければなりません。

食堂、休憩室、更衣室は、業務の円滑な遂行に資する施設であり、派遣労働者と派遣先の労働者で別の取扱いをすることは適当でないことから、同様の取扱いをする義務が派遣先に課せられています。

(4)福利厚生((3)の施設を除く。)

派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者について、当該派遣就業が適正かつ円滑に行われるようにするため、適切な就業環境の維持、診療所等の施設であって現に当該派遣先に雇用される労働者が通常利用しているもの(4(3)の施設を除く。)の利用に関する便宜の供与等必要な措置を講ずるように配慮しなければなりません。

「診療所等の施設であって現に当該派遣先に雇用される労働者が通常利用しているもの」とは、派遣先が設置及び運営し、その雇用する労働者が通常利用している物品販売所、病院、診療所、浴場、理髪室、保育所、図書館、講堂、娯楽室、運動場、体育館、保養施設等の施設をいいます。

なお、配慮義務というのは、何らかの具体的な措置を講ずることを求めるものであるが、派遣先の労働者と同様の取扱いをすることが困難な場合まで当該取扱いを求めるものではなく、例えば、定員の関係で派遣先の労働者と同じ時間帯に診療所の利用を行わせることが困難であれば別の時間帯に設定する等の措置を行うことにより配慮義務を尽くしたと解されます。

(5)派遣先の労働者に関する情報、派遣労働者の職務遂行状況等の情報について提供する配慮義務

(イ)派遣先は、下記の措置が適切に講じられるようにするため、派遣元事業主の求めに応じ、派遣先の労働者に関する情報や、派遣先の指揮命令の下に労働させる派遣労働者の業務の遂行の状況等の情報を派遣元事業主に提供する等必要な協力をするように配慮しなければならない。「業務の遂行の状況」とは、仕事の処理速度や目標の達成度合いに関する情報を指し、派遣先の能力評価の基準や様式により示されたもので足ります。

①派遣元事業主において段階的かつ体系的な教育訓練やキャリアコンサルティング

②派遣先の通常の労働者との間の均等・均衡待遇の確保のための措置

③一定の要件を満たす労使協定に基づく待遇の確保のための措置

④派遣労働者と比較対象労働者との間の待遇の相違の内容及び理由等の説明

(ロ)特に、派遣先の労働者に関する情報のうち、派遣先の通常の労働者と比較対象労働者との間で均衡待遇が確保されている根拠又は派遣先の通常の労働者と比較対象労働者との間で適切な待遇が確保されている根拠について、派遣元事業主から求めがあった場合には、派遣先は、派遣元事業主による派遣労働者の均等・均衡待遇の確保や比較対象労働者との間の待遇の相違の内容及び理由等の説明が適切になされるようにするため、それぞれの根拠について情報提供することが求められることに留意する必要があります。

(ハ)派遣元事業主が派遣労働者の職務能力の評価を行う場合には、当該情報のみならず、派遣元事業主が自ら収集した情報に基づき評価を行うことが必要です。

(6)派遣先が業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練を実施せず、又は福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)の利用の機会を付与しない場合の取扱い

派遣先が派遣元事業主の求めに応じて業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練を実施しない場合若しくは福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)の利用の機会を付与しない場合又はこれらの場合に当該派遣先に対して労働者派遣法の規定による指導若しくは助言をしたにもかかわらず、当該派遣先がその指導等に従わなかった場合等には、当該派遣先に対し、当該派遣就業を是正するために必要な措置をとるべきことを厚生労働大臣から勧告される可能性があります。

また、当該勧告をされた場合において、その勧告に従わなかった場合には、その旨を公表される可能性があります。

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